AGU Fall Meeting 2020 (Online)に参加して

米国地球物理学連合(American Geophysical Union: AGU)は地球物理学分野では世界最大と広く認識されている国際学会です。AGUは、Journal of Geophysical Research (JGR) やGeophysical Research Letters (GRL)といった権威のある科学誌を刊行しており、私自身も学生のときに論文が掲載され、感慨深かったことを今でもよく覚えています(余談ですが、その頃は投稿や査読は航空便で郵送でした…)。その秋季大会(Fall Meeting)は、これまでクリスマス前の1週間に毎年サンフランシスコで開催されることが慣例となっていました。クリスマスムードのサンフランシスコにおいて、シーフードやワインと共に、世界最先端の研究にどっぷり浸る1週間は他に代えがたい貴重な機会でしたが、今年は新型コロナウイルスの影響のため、残念ながらオンラインでの開催となりました。
同様にAGU Fall Meetingでの成果発表を計画している研究者は世界中に多数いるようで、そのためか、発表数は例年通り非常に多く、オンライン開催は12月1~17日と2週間以上に及びました。このように発表数は多かったけれど、検索機能を使って口頭発表のコンテンツやポスター発表(iPoster)を即座に閲覧できるのは大変便利に感じました。また、特筆するとすれば、いつもの過酷(!)な時差との格闘はほとんどなかったことがあげられるでしょう。
私自身は口頭発表に選ばれましたが、その準備は当初の想定よりかなり大変でした。事前に15分間厳守の発表ビデオを11月中旬には仕上げる必要があり、それに加えて、Live発表としてZoomを利用した6分間の口頭発表も会期中に行う必要があったからです。この口頭発表の方式については賛否両論ありそうですが、膨大な数の発表を限られた期間にオンラインで行うためには、致し方なかったかとも思います。他方で、AGU Fall Meeting 2020への登録者には、こういった発表コンテンツは2021年2月15日まで閲覧可能となるようです。自身の研究の宣伝だけでなく、他の研究を引き続き調査する上
でも、とても良いサービスだと思いました。
当研究室からは4名の学生がiPoster発表を行いました(図)。これまで海外出張は不可であった学部4年生もAGU Fall Meetingへの参加の機会が得られ、「本物」の研究に触れ合えたことは大変貴重な経験だったと思います。各学生の感想を以下に紹介し、本稿を締めくくることにします。
(入江仁士)

蔡穎(博士課程後期1年)

今回は初めてAGUに参加し、ポスター発表をさせていただいて、いろいろな知識と経験を積み重ねました。iPosterを通じて、数多くのポスターから自分の研究に近い発表を探せるだけではなく、ポスター発表者に直接質問するのも気軽にできました。今回AGU Fall Meetingに参加することによって、世界の最先端の研究動向を感じて、大変貴重な経験ができたように思いました。こういうオンライン学会が普及すれば、いつ、どこでも国内・国際学会に参加できます。さらに自分自身知見を広げて、知識や知恵を向上させて、研究をより日常生活になじむことができて、素晴らしい勉強の仕方だと思います。

薛子璇(博士課程前期2年)

今回、AGUでの発表は初めてでしたが、幅広い分野に関わる国際最先端研究に触れることができ、多くの刺激を受けました。もちろん、アブストラクトやポスターなどの準備は大変な試練でしたが、しかし、自分の研究内容を纏めて、研究成果をアピールして、英語で表現することなど総合的な研究能力を鍛えるいい機会だと思います。また、学会期間中、自分の研究分野に関連する他の研究者の発表を聞き、いろいろと勉強になり、納得できる点も多々ありました。AGUを通して他の国の研究者と繋がって、自分の研究内容は多くの人たちと共有できたことを嬉しくと思います。私にとってとても貴重な体験でした。

齊藤輝(博士課程前期1年)

今回のAGUは私にとって、海外学会での発表という貴重な機会になりました。研究者の方々と対面でのコミュニケーションを取ることができなかったのは残念でしたが、気軽に興味あるセッションへ参加できるなどの便利さも感じました。個人的には印象に残ったのは、研究者が進学を悩む学生にアドバイスするセッションで、研究者の方の親身かつ熱意ある応援に勇気づけられました。今後は現地とオンライン開催の両方の良さを取り入れたミーティングが開催されると思うと楽しみです。

大野健(理学部地球科学科4年)

私はAGUが初めての学会発表であり、加えて国際学会かつオンライン発表とのことだったのでiPosterの作成など色々と苦戦することがありました。一方で最先端の研究に触れられる貴重な体験をさせていただきました。そして様々な知識を吸収できたと実感しています。
CEReSの教員は、大学院融合理工学府地球環境科学専攻リモートセンシングコース、学部では理学部および工学部で学生指導をしています。今回、入江研究室所属学生さんの学会発表感想をiPosterとともにご紹介しました。かつて経験したことのない状況の中、試行錯誤しながら研究に邁進する皆さんを応援しています。

 

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