千葉集中観測キャンペーン(Chiba Campaign 2020)の実施について

冬本番の訪れを間近に感じはじめた11月30~12月13日に、入江研究室が主導で千葉大学西千葉キャンパスをベースとして千葉集中観測キャンペーン(Chiba Campaign 2020)を実施しました。この集中観測キャンペーンは今年で7年目を迎えることができました。これまで、プロジェクト等によらない枠組みで、基本、入江研究室ベースで実施するという小規模な集中観測として実施して参りました。その発想の原点は、参加者全員で短期間に焦点を当ててSKYNET等の地上観測や衛星のデータを解析し、特に学生の研究に役立てられたらと考えたことです。このことに加えて、参加研究者や学生の交流を促進しつつ、自由な発想で新しい試みをする場としても活用し、その結果として大規模プロジェクトの立ち上げにつながればという狙いもあります。実際、これまでの活動が環境省推進費プロジェクト(課題番号2-1901、代表:入江仁士)につながりました。今回、その環境省推進費プロジェクトの目的に加え、GCOM-Cの大気プロダクトを検証すること、都市大気環境におけるガス・エアロゾル・雲・放射の時空間分布について新しい知見を得ること、さらには、異なる観測機器により得られたデータの相互比較等により評価することも目的としました(図1左)。初期結果は以下のサイトから閲覧可能ですので、興味があればご覧ください。

Chiba Campaign 2020:
http://www.cr.chiba-u.jp/lab/Irie-laboratory/group_archive/ChibaCampaign2020/

環境省推進費プロジェクトに関連し、日本の標準測定法でPM2.5重量濃度を測定するために、国立環境研究所にお願いして標準法に基づくFRMサンプラ(Model 2000、Thermo社製あるいはR&P社製)を2台設置し、PM2.5やブラックカーボンの重量濃度のフィルタ捕集を行いました(図1右)。基本的には毎日、わずかな異物なども混入しないように細心の注意を払ってフィルター交換を行うことが必要で、これは入江研究室が引き受けました。本来であれば、貴重な経験になるので学生にお願いしたかったのですが、新型コロナウイルスの学生への罹患のリスクを抑えるために、私が実施することとしました。リモセンとは違うフィルターによる捕集サンプリングということで正直なところ少し緊張しましたが、数日経つと、楽しくなってきました。いつでも新しいことを行うことは楽しいと改めて実感したひとときでした。
さらに、今回はメイワフォーシス株式会社のご厚意により、LI-COR社のLI-7810トレースガスアナライザーを2週間もお借りして、メタン(CH4)、二酸化炭素(CO2)、水蒸気(H2O)の濃度測定も実施しました。集中観測期間中、工学系総合研究棟Ⅰの屋上の観測サイトにおいて、CO2濃度は450-500 ppbvに、メタン濃度も2200-2300 ppbvに達していることが分かりました。また、本装置の可搬性を活かして肩から装置を下げた状態で西千葉キャンパスとその周辺を歩き回り、水平分布観測を実施しました。これは学生のアイデアで実施しました。予想よりも濃度変動が小さいことや、日によっては屋上の方が地上よりも濃度が高いといった興味深いデータが得られ、上空の大気汚染の移流の影響が示唆されました。加えて、国立環境研究所の可搬型FTS(Fourier Transform Spectrometer、EM27/SUN)を千葉大学の工学系総合研究棟Ⅰの屋上に設置して、平日晴天時に大気微量成分の吸収をうけた太陽直達光スペクトルを測定しました。さらには、集中観測期間中にNASAのOCO-3のグループともコンタクトをとり、OCO-3の観測が千葉大学をカバーしていることが確認でき、OCO-3データ検証に貢献できる見通しを得ることができました。

最後になりますが、今回は、このChiba Campaign 2020集中観測のDaily reportを、CEReSのSlackにポストしました。正直なところ、CEReS内においても、各研究室が扱っている各種衛星データや画像をご提供いただいて、相互理解を深められたらと考えておりました。そういった意図が必ずしも伝わっ
ておらずデータや画像の提供は限定的でした。しかしながら、来年以降も集中観測を実施したいと考えておりますので、その際にはぜひとも研究室の垣根を越えた形で集中観測を実施出来たらと考えております。興味のある方がいらっしゃいましたら、入江研究室メンバーに気軽に声をおかけください。
(入江仁士)

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