日本大気化学会の研究集会である第25回大気化学討論会を、2020年11月11(水)~13日(金)に討論会初の試みであるオンライン形式で開催しました。討論会は例年、学会員が大会実行委員会を持ち回りで担当して各地で開催されており、第25回の討論会は入江先生と齋藤が実行委員を務め、当センターの共催、千葉大学の後援で、当初の予定ではけやき会館(大ホール、レセプションホール)での開催を計画していましたが、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点からやむなくオンライン形式での開催となりました。
実行委員として、しばしば温泉地で開催され、参加者が夜遅くまで議論し交流する大気化学討論会の「三密」な雰囲気をオンライン形式でいかにして「再現」するかという点について検討を重ね、大会のオンラインシステムとして「Slack」を採用し、大会参加者全員を大会のSlackシステムにメンバー登録し、ポスター発表はSlackのポスター専用チャンネルで、口頭発表や会員集会はSlackの専用チャンネルから「Zoom」に参加する形式で進めることとしました(写真1)。参加者にはSlackシステムで表示される各自のプロフィール画像として「参加証」を配布し、「参加証」の色で一般(青色)と学生(緑色)が容易に区別できるなどの工夫をしました。また、コーヒーブレーク時の参加者同士の会話を再現するため、「Slackコール」という15人以下のオンライン通話システムを利用し、参加者同士がオンライン上で交流し、インタラクティブな議論ができるようにしました。懇親会もオンライン形式となりましたが、参加者はオンラインじゃんけん大会などを大いに楽しんで下さったようです。
コロナ禍ですでに多くの方がオンライン形式での学会に参加した経験をお持ちであったこともあり、Zoomによる口頭発表も大きなトラブルなく順調に進行し、通常のオンサイト大会と変わらない活発な質疑が行われていました。また、ポスターはSlackシステム上に常時掲示されており、参加者はチャットでいつでも自由に発表者に質問ができるため、ポスター発表についてはすべてのポスターをじっくり見て質問をする機会を持てるオンライン形式の方が適しているのではないかと感じました。今大会の特別セッションとして市井先生に「ボトムアップ・トップダウン手法による陸域物質循環モニタリング」と題した招待講演を行っていただきましたが、50分の時間枠を超過するほど参加者から多くの質問が寄せられ、講演後もSlack上で参加者との質疑のチャットが続くなど、Slackシステムの利点が大いに活かされた大会となりました。
第25回大気化学討論会の大会運営を通して、長期化の様相を呈しているコロナ禍でしばらくはオンライン形式での学術研究交流を続けざるを得ない状況下で、出張の手間が省けるというメリットに加えて、やり方次第ではオンサイト大会と遜色ないかそれ以上の深い議論ができるオンライン大会のさらなる可能性が見出せたことが大きな収穫でした。
(齋藤尚子)