2024年4月14日から5月24日までの1か月半、メルボルン大学(オーストラリア)を訪問し、同大学のCraig Bishop教授との共同研究を行いました。Bishop教授はデータ同化研究の大家であり、近年の研究で、降水量のような歪度の高い分布を持つ変数に適したアンサンブルデータ同化手法をご提案されています。報告者自身もアンサンブルデータ同化を用いて、雨量計観測と再解析データから全球の降水量分布を高精度に推定する手法を研究しています。そのため今回の訪問では、Bishop教授が提案する手法を学び、自身の研究に応用することで、降水量分布の推定手法をさらに改善することを試みました。メルボルン大学滞在中には同教授が2、3日に一度研究の議論をしてくださり、Bishop教授が提案する手法を理解するとともに、データ同化の基礎を学びなおす機会となりました。将来的には衛星観測の情報も取り入れ、降水量分布の推定精度をさらに向上させることを目標とし、同教授とは報告者が日本に帰国後も、定期的に議論を重ねています。特に時空間解像度の高いひまわりの観測を入力値として組み込むことで、雨域分布の空間構造を正確に捉え、さらに降水量分布推定を改善できることが見込まれます。
さらに今回のメルボルン滞在では、オーストラリア気象局にて、上記の研究に関するセミナー発表を行う機会もいただきました(写真)。同セミナーでは気象局の研究者たちから多くのご意見を頂戴するとともに、気象局で進んでいる再解析データや、雨量計と衛星観測を統合した降水量分布データの開発プロジェクトに関しても勉強させていただきました。
このような貴重な経験を積む機会をくださった市井教授、小槻教授、メルボルン滞在中に惜しみなく議論の時間を作ってくださったBishop教授をはじめ、今回の訪問にご理解ご支援いただいた多くの皆様に、この場をお借りして心より感謝申し上げます。
(環境リモートセンシング研究センター 特任助教 武藤裕花)